ネットや新聞、テレビなどで、私たちは日々、世界中のさまざまな出来事を知る。報じられるのは、戦争やテロリズム、人権問題、環境破壊、自然災害などなど。
そんな大ごとの前には、自分のささやかな行動なんか無意味。個々人の決意や努力は、リソースの無駄使いでしかない…なんて思えてしまう。
本書は4章からなるオムニバス風の長編小説。
1~3章は現代日本が舞台。ビール会社の営業マン、都議会議員の妻…テレビ局の報道ディレクター、各章の主人公たちの日常と、いささかフクザツな“秘密”が語られる。
しばしば本筋とは無関係っぽい逸話が入ったりするんだけど、これらのエピソードが重なるほどに、登場人物たちの造形が確かになり、現実味がジワジワ増していく。描き方が実に巧み。
これら3章に共通するのは、「世界は変わらない/変えられない」とか「変革など希求すべきではない」とか…そんな閉塞感や諦念の雰囲気。
ところが最終章で、物語はブッ飛んだ方向へ展開、オドロキの着地を決める。かなり予想外。
読後に伝わってくるのは、「現実から目をそらすな」「自分にできることをやれ」と言わんばかりの、叱咤みたいな著者の主張。なかなかに力強いぞ。
やっぱ、あきらめてなんかいられない。より良い未来を目指さなきゃ♪