利用者さんや職員らが、新たに入ったり、辞めていったり…。
時おり見られる、出会いや別れ…これは福祉作業所に限ったことではありませんが。
長年ウチの施設を利用していたAさん。強い個性の持ち主で、施設の“顔”とも“看板”とも言えそうな存在でした。
そのAさんが、諸事情によって別の施設へ移ることに。私たちは送別会を開き、手作りの記念品をプレゼントし、Aさんを送り出しました。
その翌日。ポッカリと大きな穴が…ということもなく、施設内の雰囲気は、初めからAさんがいなかったかのよう。
日課をこなす利用者さんたちには、Aさんの話題を意識的に避けている様子がうかがえました。
現在への指向性が強い
利用者さんたちは情が薄いのでしょうか?
別れに際して淡々としている利用者さんについて、入職したばかりの職員や、現場実習の学生らから、上記のような疑問を投げかけられたことが何度かあります。以前は私も、同様の不可解さを抱いたものでした。
施設での別れを見続けるうち、次第に分かってきました。
利用者さんたちの多くは、いなくなった人との思い出を振り返ったり、「今ごろどうしているのだろう?」などと想像したり、自分の寂しい気持ちに向き合ったりすることが、比較的苦手なのです。そこには、“知的な困難”や“繊細さ”など、それぞれの特性が影響しているのかも知れません。
現在への指向性が強い…そのように思えます。
私個人は「過去や未来にこだわらない分、“今”を精いっぱい生きている」と解釈。疑問に対する私なりの見解として、職員や実習生らに伝えています。
移行したAさんの様子が、耳に入ってきました。新たな施設が合ったらしく、毎日を伸び伸びと過ごしているとのこと。
Aさんも“今”を精いっぱい生きているようです。
photo credit: trendingtopics #RightNow (Trending Twitter Topics from 04.04.2019) via photopin (license)