私はカウンセラーではないのですが、時おり、似た役割が求められます。
社会福祉士として行なう相談支援では、相手の悩みを聴いたり、何らかの助言をする局面があるのです。
そこで私は、相手の苦悩や迷い、悲哀に応じる際、参考となりそうな言説を、意識して見付けるようにしています。日々の会話、講演や研修、書籍などの中から。
「過去は変えられます」
就職に困難を抱える若者たちを支援している某団体。そこで私が耳にした、支援者の言葉です。
引きこもりや病気、社会での挫折、家族との別離…さまざまな境遇を経た若者が集まり、職業訓練に励んでいる施設でした。
「訓練に頑張って就職を果たし、自立を実感できるようになった時、彼らは過去を振り返って『つらかったあの時期、あの経験があったからこそ、今の自分がある』と思うでしょう。思えるようになってほしい。…未来への働きかけ次第で、彼らの過去は変わるのです」
頑張りの実感が説得力に
過去に起きた出来事は変えられない。しかし、それをどう捉え、どう解釈し、どう意味付けるかは、自分で選択し、決めることができる…このように私は理解しました。
突き詰めれば「自分を変える」「意識を変える」ということかも知れません。
とは言え、これは頭の中だけで済ませられるような、安易なものではなさそう。
頑張ってきた自分自身の実感が、過去を再解釈する際、強い説得力となって作用すると思われます。
前向きな行動こそが、過去を変え得るのでしょう。
誰かを支援するためというだけでなく、自分自身にとっても、意義深さを覚える言葉でした。
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