天竺堂の本棚小説

ユーモアとペーソス入り交じる人間絵巻 『楡家の人びと』

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『楡家の人びと』

 公私でご縁のあった某医師の急死を知り、私はあわてて葬儀に駆け付けた。
 大きな民間病院の院長を務める人物で、医師として現役だったので、斎場は弔問客でごった返していた。受付の病院職員たちは、職場の非常事態に際し、みんな不安を隠せない様子だった。私は座れる椅子を見付けられず、人垣の後方から祭壇に向け、立ったまま手を合わせた。
 焼香が進む祭壇のそばに、学生服の少年が見えた。院長のひとり息子で、有名な進学校に在籍する秀才であると、生前の院長から聞かされたことがある。うなだれる少年の肩は、父親が遺した病院の将来を支えるには、いささか細すぎる気がした。

 それから数年後、病院では勤務医の顔ぶれがガラリと変わった。何やら内輪もめがあったらしいけど、私は知らない。
 どこかの医学部に進学したというあの少年、いつかは病院を継ぎに戻って来るのだろうか?

 ……ユーモアとペーソスが入り交じる、楡一族の人間絵巻を読みながら、そんなことを思いました♪

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