「施設を利用する人たちが“事業所慣れ”しないように…」
行政主催の研修会で耳にした言葉です。障害者の就労支援施設などが対象でした。
就労支援施設の目的は、一般就労(民間の企業・事業所で働くこと)による障害者の自立にあります。
障害者が施設での福祉的支援に慣れてしまうと、一般就労へ至る能力が養われにくくなるので、避けるべき…「事業所慣れ」には、そのような意味やニュアンスがうかがえます。
本音は「できるだけ短期間で、多くの利用者を一般就労へ送り出してほしい」というところでしょう。
就労実績は“数”で表せます。「事業所慣れ」という言葉の背後には、実績の上積みを進めたい意思がひそんでいるようです。
一緒くたに扱えない人たちを一緒くたに支援
全国にある就労支援事業所は、共通の制度で運用されています。
一方、それらを利用する個々の当事者は、個々の課題を抱えています。
希望する就労先と、実際の能力が適合しにくい人がいます。作業能力は高くても、労働意欲の醸成が必要とされる人もいます。“働いて稼ぐ”ということ自体を、まず理解してもらわなければならない人もいます。
これらの人たちは本来、一緒くたに扱われるべきではないはず。
一緒くたに扱えない人たちを一緒くたに支援しているのが、現在の就労支援事業です。
就労支援事業所は就労実績で評価されがち。ですが、支援を受けている個々人に目を向けなければ見えないものもあります。
「事業所慣れ」が好ましいとは思いませんが、事業所に慣れるところから始めなければならない利用者さんもいるのです。
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