手塚治虫のライフワーク『火の鳥』の「大地編」を、桜庭一樹が小説として書き継いだ意欲作。
日中戦争後の上海で、長寿をもたらす未知のホルモンを分泌する伝説的な鳥の捕獲を狙う日本軍が、タクラマカン砂漠への調査隊を組織して…というところまでが、手塚が遺した原稿用紙2枚半ほどの構想メモ。
これを桜庭が膨らませ、火の鳥の力を借りて時間をさかのぼる技術を手に入れた軍人たちが、第2次世界大戦で日本を勝たせようと歴史の改変を繰り返すという、独自の物語に仕立て上げた。
登場人物たちのしゃべり方が大げさで説明過多だったり、物語の展開がやたらと目まぐるしかったりするのは、手塚マンガをノベライズしたような味わいを出すための技巧らしい。
シリーズの一編として成功してるとは言い難いけど、書き手の気合いみたいなものが伝わってきたりもして、個人的には面白く読めました。
手塚本人が描いてたら、どんなマンガになったのか? 構想を膨らませたのが別の人材なら、どうだったか? なんて妄想するのも、ひとつの楽しみ方かも…