著者によると「“黄金期”のSF小説と“黄金期”の推理小説を合体させてみたい」との意向で書かれたそうな。
太陽系に拡がった人類が、封建的な階級社会を築いてる未来世界が舞台。
「宇宙的殺人者」と称されるジャック・グラスが絡む怪事件を描く、3中編の連作。
第1話は、小惑星に幽閉された囚人7人の生存闘争と、極限状況からの脱出。
第2話は、ミステリマニアの令嬢が探偵役となり、召使いの殺害事件に挑む。
第3話は、虚空に浮かんでる居住カプセル内で起きた“密室殺人”と、その顛末。
道具立てとか構成とか、細部まで凝っており、緻密に描かれてる印象。
一方では、ブッ飛んだ奇想が炸裂。ジャックが関与する殺人事件は、回り回って“太陽系の命運”とか“人類文明の行末”にまでつながってしまうのだ。
著者が掲げた「合体」が成功してるかというと、個人的には疑問。なんだけど、意欲は充分に伝わってきました。