天竺堂の本棚小説

弱く愚かな人々 普遍的な姿に共感 『火星年代記(新版)』

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『火星年代記(新版)』

 名高いSF短編集を、ブラッドベリ自身が改訂した“決定版”みたいな本。

 人類の火星進出に絡んだ短編が時系列に並んでるんだけど、旧版よりも時代設定が未来へずらされ、いくつかの話が追加・削除してある。訳文も新しくなってる模様。
 それでも、寓話的で風刺的で、幻想的にしてノスタルジックな世界観は変わらない。

 登場人物たちの多くは、猜疑心が強く、やたらと頑固で、思い込みや迷いにとらわれてる。
 何十年も前に読んだ時は、人物造形がいささか極端で不自然に思え、イマイチ好きになれなかった。

 ところが、自分が社会人となって紆余曲折を経て、家庭を営んだりしてる今になって読むと、人々の弱さや愚かさにシミジミと共感できるように。
 浮世離れして見える物語だけど、いつの時代にも変わらない、そして変われない、私たちの普遍的な姿が描かれてることに気付かされた。

 やはり名作なのでした♪

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