とても現実とは思えない、常識では考えられない…そんな殺人事件が、現実的で常識的な決着を迎えるというのが、ミステリーのひとつの定形だろう。
本書は奥泉光による、将棋界を舞台にしたミステリー。
矢文で届けられた詰将棋に始まって、宗教めいた異端の将棋組織やら、地下神殿の巨大将棋盤やら、盤面の“下”やら、何とも不思議でケレン味あふれる物語が展開。実在の有名棋士たちのエピソードも絡んで、グイグイ読ませる。
で、この先どうブッ飛んでくれるのかと期待してたら、整然と謎解きが進み、現実/常識の枠内にきれいに収まる幕切れに。
これはこれで意外な驚きだったけど。
いっそ整合性とか無視して、怪奇&幻想の方向へ突き進んでほしかった気も…。