天竺堂の本棚小説

“主役”はオマエ 熱く鼓舞する物語 『アルケミスト』

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『アルケミスト』

 学校あたりでは「将来へ夢を持とう」「やりたいことを見付けよう」「ひたむきに頑張ろう」なんて子供に諭したりする。無益とは言わないけど、幸福や栄達を確約するものではない。
 半世紀ほど生きてきた経験上、夢とかやりたいことが見付からなくても、目標とか方針がコロコロ変わっても、一向に構わないと思う。早期に目標を立て、一途に努力を重ねる…みたいな生き方を“王道”とする価値観に、若いうちからとらわれるへきではないとも思う。

 こんな私なので、どこか啓発的で神秘的な香りがする本書には、いささかうさんくさい印象を抱いてた。スピリチュアルは嫌いだし。

 ところが、読み進めるうちに「オレに向けて書いてあるんじゃ?」なんて思えてきたではないか。
 ちょっと驚いた。

 夢や目標を「無くても可」と言い切れるようになり、諦観と納得でもって半生を振り返られるようになった私へ、それでも本書は「将来へ夢を持とう」「やりたいことを見付けよう」「ひたむきに頑張ろう」と語りかけてくるのだ。「この世の“主役”はオマエだ」と胸を突ついてくるのだ。
 達観した気になって、マッタリ落ち着いてる場合じゃないのかも知れないぞ。

 青少年向けとされてるけど。
 むしろ本書は、オトナのハートに火をつけてくれそうです♪

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