フランシス・ハーディングによる、ミステリ風味のファンタジー。
舞台は19世紀後半のイギリス。
主人公は利発な少女で、著名な博物学者の父親が捏造事件を起こし、一家で離島に移り住むことに。
ところが、スキャンダルは島まで伝わり、父親は家族を残して死んでしまう。
失意の主人公に絡んでくるのが、タイトルの「嘘の木」。
かつて父親が中国から持ち帰った植物で、嘘を養分にして成長し、果実を食べた者に真実を見せるという。
父親は自殺とされたが、その死には謎も多い。
主人公は真実を知るべく、嘘の木を育てることを画策する…。
この社会は“見た目どおり”ではない。
さまざまな“嘘”がはびこる中で、私たちは生きてるし、自分自身が“嘘”の一部だったりもする。
何らかの秘密を誰もが抱え、別の顔を隠してる。立派な人が卑劣な行為に手を染めてたり、世間知らずと思える人に波乱万丈の過去があったり、頼りなさそうな人が粘り強い根性を持ってたり。
真実を追い求める主人公は、その過程でいくつもの“嘘”と出合い、したたかに成長していく。
ホロ苦くも芳醇な読後感でした♪