アインシュタインとフロイトの往復書簡をまとめた本。
時は1932年、第一次世界大戦は終わったけど、ヨーロッパにナチズムが台頭し始めてるころ。
国際連盟から「もっとも大切と思える命題について、相手を好きに選んで意見交換せよ」との依頼を受けたアインシュタインが、「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」との問いを、フロイトに投げかける。
国家間の戦争を無くすためには、権力のある国際機関の設立が必要と考えるアインシュタインだけど、実現できるとは思えずに結局「人間には本能的な欲求が潜んでいる。憎悪に駆られ、相手を絶滅させようという欲求が!」などと苦悩。
これに対してフロイトは、人々に対話や連帯を促す「感情の絆」を創出することや、争いを嫌悪する価値観を生む「文化の力」を強めることなどを、戦争を防ぐ方策として挙げる。
物理学の天才と心理学の泰斗が交わす意見は、それでも決して高尚・難解ではなく、平和を真摯に希求する2人の姿勢がうかがえて好感が持てます。ナチスに追われたユダヤ人同士という境遇も影響してるのかも。
解説は、現代の知見を持ち込んで語る養老孟司と、フロイトの所説に基づいて語る斎藤環。読み応えはあるんだけど、本書のほぼ半分が解説というw