天竺堂の本棚 主人公が探偵に 社会派ミステリ連作 『希望荘』 宮部みゆきの連作短編集。 甘くはないけど胃腸に優しいプレーンヨーグルトみたいな主人公・杉村三郎が事件に巻き込まれる、社会派ミステリシリーズの一冊。 前作で“逆玉の輿”からドロップアウトしてしまった主人... 【続きを読む】 2016.09.15 天竺堂の本棚小説
天竺堂の本棚 馬琴の伝奇巨編 大団円までの執念 『八犬傳』(上・下) ユニークな切り口で書かれた、山田風太郎による『南総里見八犬伝』。 室町時代後期として設定された物語パートと、それを創作してる江戸時代後期の滝沢馬琴パートが、交互に連なる趣向。 前者は、全98巻106冊... 【続きを読む】 2016.08.31 天竺堂の本棚小説
天竺堂の本棚 足元を支えている 過去の堆積 『ゴールデンスランバー』 大学時代、友達と馬鹿なことばかりやってた。楽しい思い出だけど、もはや思い出しか残ってないし、それも次第にボンヤリしてきてる。 苗字を憶えてる奴は名前が分からず、名前が思い出せる奴は苗字を忘れた。 あい... 【続きを読む】 2016.08.12 天竺堂の本棚小説
天竺堂の本棚 大胆不敵な“死人” 痛快爽快な活躍 『死ぬことと見つけたり』(上・下) 武士の修身書『葉隠』を基にした、隆慶一郎の時代小説。 江戸時代初期の佐賀鍋島藩が舞台。 「死んだ気になれば何でもできる」なんて言うけど、それを本気で実践してる武士が主人公。 斬り殺されたり、溺れ死んだ... 【続きを読む】 2016.08.09 天竺堂の本棚小説
天竺堂の本棚 惨劇の“その後” サスペンスフルに描く 『ドクター・スリープ』(上・下) 文字を読んでトイレに行けなくなるほど怖くなったのは、後にも先にも『シャイニング』だけ。偏執的なほどに密度の濃い文章でもって、恐怖をジワジワと高めてくれた。 本書はその続編。 前作の主人公だったダニー(... 【続きを読む】 2016.07.20 天竺堂の本棚小説
天竺堂の本棚 昭和テイストな怪人が 虚実入り交じるミステリ 『死仮面』 折原一の奇妙なミステリ。 急死した夫の謎を探る、妻の物語。少年失踪事件に巻き込まれる、中学生の物語。…ふたつの物語が交互に語られる。 読んでいくうちに、急死した夫が書き残した小説が“中学生の物語”であ... 【続きを読む】 2016.06.20 天竺堂の本棚小説
天竺堂の本棚 宇宙規模のドンパチが 拡がる大風呂敷 『天冥の標9 ヒトであるヒトとないヒトと』(1・2) 小川一水の大河SFシリーズ第9部。 再び前進し始めた物語が、クライマックスへと盛り上がっていく。 明らかになった“真相”は、それなりに衝撃的ではあったけど、小さなスケールにまとまってしまいそうな予感も... 【続きを読む】 2016.06.06 天竺堂の本棚小説
天竺堂の本棚 物語世界の“真実”や“外側”あらわに 『天冥の標8 ジャイアント・アーク』(1・2) 小川一水の大河SFシリーズ第8部。 第2部で何百年も時代をさかのぼり、そこから時系列に語られてきた物語が、第1部につながる。 2分冊の前半は、第1部の物語を別の視点から語り直したもの。 第1部で脇役だ... 【続きを読む】 2016.05.16 天竺堂の本棚小説
天竺堂の本棚 シェルターの子供たち 生き延びる闘い 『天冥の標7 新世界ハーブC』 小川一水の大河SFシリーズ第7部。珍しく前作の直後から始まる。 太陽系規模のカタストロフを受け、地下都市がパニックに陥った小惑星セレス。巨大シェルターに避難した子供たちの集団が直面する、過酷なサバイバ... 【続きを読む】 2016.05.14 天竺堂の本棚小説