『ローマ法王に米を食べさせた男』 | 施設長の学び!

『ローマ法王に米を食べさせた男』

 
 福祉施設の経営は、地域社会と切り離しては成り立ちません。その地域の福祉的機能の一端を担いつつ、住民の方がたの理解と協力に支えられている…そんな関係。
 地域と福祉施設、両者の“元気”は連動しています。地域振興は施設の課題でもあるのです。

 全国各地でさまざまな“地域興し”の取り組みが行なわれている中、本書にはユニークな成功事例が紹介されています。事例もユニークですが、著者もユニークです。


 著者は青年時代、東京でテレビ番組の企画・構成作家として働いていたそうです。家庭の事情で故郷・石川県羽咋市にUターン。市役所の職員となり、地域振興を手がけます。

 地元の古文書で“空飛ぶ円盤の神話”を発見した著者は、UFOによる町おこしを計画。あの手この手で注目を集め、宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」の設立を果たします。
 農林課に異動してからは、中山間地域の集落振興に着手。高齢化と過疎が進む農村で、若者たちの民泊を成功させたり、地元米のブランド化を進めるなど、こちらでもアイデアに富んだ振興策を連発します。

 周囲を驚かせる妙手や奇策の数々。書名に挙げられた事例は、それらの中のひとつに過ぎません。公務員の枠に収まらない奔放さが、実に痛快です。
 その半面、予算を抑えて事業化でまかなう手法や、持続性を考慮したビジョン、常識にとらわれない柔軟さ、住民を“乗せる”手練手管、合議を経ない独断専行、マスコミの積極活用、消費者心理の洞察など…行動の裏に、計算高い狡猾さと、無駄を嫌う合理性が隠れています。大いに感心。

 著者の一人称、あるいは聞き書きに近いスタイルなので、自慢気なホラ話に思えるかも。ですが、誇張が入っているとしても、本書に登場する博物館やブランド米は、現実に存在・存続しているものばかり。
 地域振興の成功事例として、アイデアを具現化するケーススタディーとして、学ぶところが多い一冊です。

photo credit: tamaki via photo pin cc